先日、母親が死んだ。

突然すぎる死だった。

10日ばかり過ぎるが、頭は冴え切らない。

ぐるぐる ぐるぐる 同じことばかり考える。

答えの出ない問答を一日中。一日中。

 

 

通夜に、母親と繋がりのあった、家族ではない知り合いから手紙が届いた。

その手紙の中の言葉に、一瞬希望が閃いた。

 

 

悩みも苦しみもない世界で暮らしてください

 

 

棺桶に入れて焼いてしまったので

後半部分は原文ままではない。

 

悩みも苦しみもない世界

 

その一文は、血縁の私には思いつかなかった想像だった。

 

母は悩んでいた。

苦しんでいた。

 

それを、助けられなかった。

 

人は、人の悲しみを知ることはできない

苦しみも分かることはできない

 

そう思っていた。

だから私は放棄したのだ。

母の悩みも苦しみも悲しみも寂しさも、

なんの根拠もない「大丈夫だろう」という感情に押し流され、母を助けられなかったのだ。

 

失って、

母の身体がどれだけ冷たくなっていたかとか、

母がどれだけ寒さに身を凍えさせていたかとか、悩みであたまを抱え、毎日毎日、苦しみと戦っていたかとか、

失って気づいたのだ。

 

何もかも遅い。

全部遅い。

だってもう母はいない。

 

どれだけ後悔しても

この後悔はなんの役にも立たない

後悔すれば母が戻ってくるなら、私はこの後悔を一生しよう

でもそんなことは全くないのだ。

だからといって後悔しない日は来ない。

私は毎日、毎日、この食えもしない後悔と、毎日戦っていくのだ。

 

 

悩みも苦しみもない世界へ、母が行けたのなら……